chura-machiのブログ<時には万年筆で②>

旅に出てうたを綴る・自転車、鉄道、フォークソング

旅の記憶

私は日本、国内旅行が好きで、47都道府県全て行ったことがあります。もちろん電車や車で通過しただけっていうことではなく、ちゃんと旅行で訪れているわけです。たまに新幹線で通過しただけなんていう人がいますが、それは旅したことにはなりません。
それじゃぁ、これまで行った中で一番よかったところは?と良く聞かれるんですが、それは中々答えるのが難しいんですね。なんで難しいかというと、一つは日本の街はほんとどこも美しく、みんな興味深い、つまり、どこが一番と選べないんです。それからもう一つ、京都の祇園とか北海道の富良野・美瑛だとか超有名な観光地ももちろん好きなんです。だけど旅通としては、いささかカッコつけたい。う〜ん、そうだね、岡山の備中高梁から、車で1時間ほど走ったところに「吹屋」という美しい町があるんだよ、中々行くのがたいへんでねぇ、山の中に突然現れる美しい町並み・・・、なんてことをうんぬんかんぬん喋りたいわけ。ただ聞いている方はだんだん退屈してくるわけでね。その辺のバランスがむずかしい。
今から10数年前でしょうか、鹿児島へ旅しました。その時は鹿児島への直行便が取れず、一旦博多へ行きそこから開通したばかりの九州新幹線に乗り、鹿児島中央駅に着いた。昔は西鹿児島駅って名前だったけど、新幹線が開通し中央駅と名前が変わり、名実ともに鹿児島の玄関駅となった。それで、中央駅から市電(路面電車)にのって、市街の方へ向かうわけです。どこの街も大体そうなんだけど、昔の国鉄の駅は街のはずれに位置してるんですね。例えば大阪駅は大繁華街梅田にあるけれど、昔はあのあたりは何にもなかった。埋めた田んぼで埋田、それが地名の由来って話もある。昔からの大阪の中心部は大阪城の城下、本町、船場あたりだった。横浜駅だってそう。初代横浜駅は今の桜木町駅だけど、昔の横浜を想像してごらん、そう横浜の中心部は大さん橋より南側、関内、伊勢佐木町、元町あたりだった。
で、鹿児島の話に戻るけど、市電に乗って市街地の真ん中、天文館の一つ手前の電停、「高見馬場」で降りた。この辺りはちょっと路地に入ると鹿児島一の飲み屋街。昼間っから歩いても昨夜の余韻が残っている街なんですね。なんでいきなりこんなとこで降りたのかというと、そこにホテルをとってたから。まぁまぁ、それで市内を観光して、夕方戻ってきたら楽しい旅の夕げですよ。
さすが鹿児島一の飲み屋街だけあって、よりどりみどりなのですが、その日は路地裏のちっちゃな地元料理の飲み屋に入った。中年の夫婦が経営している店で、地鶏の料理だとか安くておいしいの。客は私一人しかいなかったので、自然と私の旅の話を聞いてくれる。特に奥さんは聞き上手で明るい性格。明日は知覧へ行くことを言ったら、ここがいい、あそこ行ったらいいと色々と教えてくれた。そんな時ご主人はカウンター越しににこやかに笑みを浮かべ、うんうんうなづいている。あまりにも、いい雰囲気についついお酒も進んだわけで・・。
帰り際、二人で暖簾の外まで見送ってくれて、「明日から良い旅を!」と奥さんの明るい声がよかったねぇ。

旅の記憶

詞・曲 chura_machi

市電を降りて 路地に潜り込めば
昼間の飲み屋街 昨夜の余韻
高見馬場のやきとり屋で
南国の香り 感ずるとき
あの優しい夫婦の かたりに送られ
たどる鹿児島の 旅はつづく

何も考えずに 乗った列車で
たどり着いたのは 最南端の駅
開聞岳から 吹く風は
菜の花畑を 激しく撫でる
その昔 海を目指して飛び立った鳥が
二度と帰らなかったこと
かなしい片道切符

激しい春風に 逆らいながら
一人歩いていると
今日もおばさんたちが
野菜を背負って 駅に向かった

桜島を眺め コーヒーを飲みながら
相変わらずだな 僕の旅 一人旅